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・2013年もヘタレて生きてます。

Next Program is・・・
 ・ニコニコ生放送をやってたりやらなかったり。   詳しくはここからぶんらじ掲示板へ。
"サイアク"
最悪。その言葉が示す意味はそのまま、一つだけ。
最も悪い。ただそれだけ。
"最も"悪いのだから、それは二つと無い。
そのハズなのに、僕らは。
呪詛のようにその言葉を幾度と無く吐き出す。
"サイアクだ"と。

今日もそんな一日だった。
あらかじめ設定しておいた時刻に携帯が鳴り、灯油ヒーターは熱風を吐く。起床する。
昨日から続く東京土産の風邪は多少なりを潜めたらしい。
起きてみれば随分な寝汗だ。身を起こすと同時に、ゾクリと寒気がする。
また身体を冷やしては元も子もあったものではない。
Tシャツを新しく着直して、机に向かう。
今日は就活。一次面接を受ける予定だ。
提出するべき書類に目を通す。抜けは無い。
次に、愛用のPCへ。電源を入れると低く唸って起動する。
現地までのルートを再確認する。とにかくJRは高い…
検索をしてみると、大概の場合はJRを迂回して設定する。
必然的に時間もかかるし、乗り換えの手間も増える。面倒な事だ。
それでも幾らかの節約になるのなら、まぁ仕方ない。
一通りの事は済んだ。行く前に少しは遊んでもみるか。
そう思い、"Maplestory"を起動する。

"ゲームサーバとの接続が切れました。"
これは…いつもの事だろう。再度接続を確認、起動を試みる。

"ゲームサーバとの接続が切れました。"

…これは…
公式サイトを確認する。案の定だった。メンテナンスだ。
朝の8時から夜の6時まで…これでは入れない訳だ。
諦めて出かける支度をする。これで抜けは…

いや、待て。携帯どこだっけ。
…よし。っと、手帳が…
えーと…

そうして、僕は乗るはずだった電車を見送った。駅から600mは離れた場所から。
次の便は十数分後。もともと余裕を持って家は出ているが、迂闊な話だ。
やっと来た電車に乗り、そのまま大きなターミナル駅まで出る。
次は別の路線に乗り換えなくてはならない。見れば…もう出るところじゃないか!
それも構造上、遠回りを強いられる場所。
どうして直通出来るホームに停めてくれないんだ、等と八つ当たりもいい所の考えを抱きながら走る。
革靴が小気味良い音を立てる。最近になって少し慣れたとは言え、革靴で走るのは辛い。
何とか間に合い、暇つぶしにと持ってきた小説を広げる。
何度か読み返した本だが、久し振りに広げるとまた面白い。

……
…はっ。

乗ってすぐ次の駅で降りるはずが…
乗り過ごしてしまった。どうも今日は注意力が散漫だ。
その次の駅で下車して、ホームを逆に変え、また戻る。
いくらなんでも時間を浪費し過ぎている。用心せねばなるまい。
その後は順調に乗り継ぎを行い、目的地まであと一つの路線で辿り着けるようになっていた。
早速切符を買う。目的地までは190円。
100円硬貨を2枚、券売機に放り込む。
これで…

ちゃり

…?
お釣りの払い出し場所から何かが出てきた。
100円硬貨よりも小さく、軽く、安っぽい…1円硬貨だ。
投入金額は"100"のまま。

へぇ、こういう風にして1円玉でも突っ込んで釣り銭を騙し取っているのかなぁ。

…って、そうじゃなくて。俺の100円を返せよ。駅員さん、すんませーん。
「…はい、どうかなさいましたか?」
200円入れたんですけど、100円しか入らなくて、代わりに1円玉が出てきたんですが…
「…え?ちょっと待って下さいね」
…奥に引っ込んでしまった。
同時に、階下のホームに電車が到着し、出発する気配がする。
…またロスか…
一向に駅員さんは姿を見せない。ただ何やら、券売機の裏でがちゃがちゃと弄る音がする。
と、不意に券売機の説明板が奥に開き、駅員さんの顔が見えた。
「…本当に200円投入なさったんですよね?」
当たり前でしょうが。自分が損するような釣り銭泥棒をするバカが何処にいるってんだ。
…と、言いたくても別にそれを立証出来るモノも人も無い。
素直に入れたと言って信じてもらうしかない。
「…じゃ、200円お返ししますので、すみませんが隣の券売機をご利用下さい」
と、200円を手渡される。指示に従って隣の券売機を利用する事に。

今度は1円硬貨は出てこなかった。

やっと着いた目的地。時間はまだ少しだけある。
あとは地図に従って進めばいい。足早に急ぐ。
地図によれば、国道二号線沿いに…これは川?それを渡った所にあるらしい。
地図を確認しつつ、駅から目的地へと向かう。



しかし、一向に二号線も、川も見えてこない…その気配すらない。
目の前の大きな道路も二号線ではないし…もしかして、その向こうか?
近くの歩道橋を渡り、更に進む。どんどんと"離れ"に向かっている気配がする…
辺りは工事現場というか、資材置き場。指定された建物らしきものはない。
これは…?
まわりを探しながら、もう一度大きな道路に出る。
自分の背面に道路案内の看板があった。
果たして、そこに二号線も記されている…

自分の背面側に。

慌てて地図を確認する。二号線を目指して歩いた筈が、どうして背面に現れるのか?
答えはすぐ判った。
地図を逆に読み違えていたのだ。
つまり、北は南に。東は西に。
なんでこうなったのかは判らない。気が焦ったのか、疲れが残っているのか…
それよりも重要なのは、東西も南北も、目的地とは真逆の方向に進んでいたという事だ。
時計を見る。既に指定された時刻となっている。

「…はは」


気が付けば、

「あははははは。
はははははははは。」


僕は、

「あっはっはっはっは。あっははははは。」


笑い出していた。
自分が笑っている筈なのに、酷く遠くから聞こえているように思える。
乾いた笑い、とはこういう事を言うに違いない。
笑えない状況。だからこそ、笑うのだ。逃げたくても逃げられない、その状況を。

一頻り笑った後は、もう走るしかない。
ここで諦めては何のためにここまで来たのか、意味が無い。
走る。走る。走る走る。
先程通った歩道橋に戻る。気力がごっそりと萎える。
走る。走る。走る走る。
降り立った駅に戻る。どうにかすると泣きそうになりそうだ。
走る。走る。走る走る。
向こうに大通りが見える。どうしてこんな事にも気付かなかったかなぁ。
走る…走る…
息も絶え絶えに走ると、そこには確かに河があった。
そして、指定された建物もあった。
時計を見ればすでに10分を過ぎていた。
それでもエレベーターに乗り込み、指定された会議室へ。
その会議室にはしっかりと"○○会社 一次面接"の文字が。
その前には誰もいない。確か複数人の面接だった筈…
だとすると、多少遅れていても中に入って無礼を詫びながら参加する方が…

よし。

意を決して、ノックをしてドアを開く。




個人面接だった。




今一度部屋の外、エレベーターホールに設置されたベンチに腰掛け、
僕は思いつく限りの自責と呪詛を頭の中で悶々と繰り返していた。
走って来て息が切れていた事も手伝って、もう何が何だか判らない。
汗も滲んでくる。面接において、思いつく限りの禁止作法をやってしまった気さえする。
あながち、的はずれでもあるまい…

やがて、先に面接に臨んでいた方が退出された。
暫くすると、面接官の方が声をかけて下さった。

「何時に予定されていた方ですか?」
「…すみません、遅れてしまいまして…」
「遅れてしまう事を、こちらの方へはご連絡いただいたでしょうか?」
「……すみません、そこまで気が回らなく…」
「…判りました。では、一応面接を行いますので、中にどうぞ」

…この言葉によくめげなかったものだ。

中に入り、先程面接中に間違えてドアを開けてしまった事を詫びる。

「いえ、お気になさらないで下さい」

…目がこちらを見ていないと言うか、なんというか。
アレだ。とりつく島もない、というやつだ。

…それから後の事はよく覚えていない。
内容としては当たり障りの無い事だったと思う。
汗は出るわ、息は上がったままだわ。面接官はくしゃみするわ。そこはいいか。

「…ありがとうございました、結果の方は十日以内に…」

どこの企業でも同じような、合否の連絡方法を伺った後に退出する。
無論、失礼を重ね重ね詫びながら。

帰りのエレベーター、備え付けの鏡で改めて自分の顔を見る。
走ってきて髪は乱れ、顔は真っ赤…
こんな状態で面接に臨んだとは。

帰り道、運賃表を見上げる。
この日の最後に、優しくも残酷なものを見た。
梅田まで190円の表示。

梅田は、去年末のオフ会で利用して以来、幾度と無く足を運んでいる。
大学へ通う定期の存在で、梅田までは比較的安い390円という道で行けるのだ。
勿論今となっては見知った道である。迷う道理も無い。

…最初からこれを知っておけば…
駅を乗り過ごす事も。100円が1円に化ける事も。
ていうか運賃のやりくりに悩む事もなかったのだ。
それが何で帰りの今になって判るんだよ。
何なんだ今日は。厄日か?

帰りの電車、黙って外の風景を眺めていた。
梅田からの帰りは、見慣れた風景であり、それ故にそれが辛かった。

「…今日はサイアクの日だ」

そんな言葉を吐きながら。

面接の結果については、自信が無いとは言わない。というか、言いたくない。
これ以上イヤな事を重ねたくないのだ…
言葉にでもしてしまえば、それが現実になりそうで、怖い。


冗談のような、本当の話。
信じて欲しくても、証人が誰一人いない話。

やってらんねぇや、ちくしょーめぃ。
こんなモンはとっとと愚痴って気ぃ晴らせてやらぁ、ペペッ。


しくしくしく…
by boardtrick | 2006-03-29 20:46 | 現実で色々
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